食輸出の「創り方」《9》地方創生に向けて①

記事

ITADAKIMASU FINE FOODを立ち上げて約1年が経過し、地方のいろいろな生産者らと会う機会が多くなった。その中で、特に中小規模の事業者から多く聞かれる声は「売り先がない」「商品をそれほど多く生産できない」「どのように販売したらいいのか分からない」という声だ。こだわりのある良いものを生産されており、自治体と連携して6次化産品などを企画・製造しているが、販売先が無く、また、販売方法が分からないのである。

「輸出は販路の一つ」--。そのように考える企業には、まだまだ国内でやるべきことがあるのではないか。輸出だけに販路を求める企業よりは、そのように考える企業のお手伝いができるのではないかと考え、昨年、会社を設立した。具体的には、どちらかと言えば、苦手な分野と思われる、ブランディング、プロモーション・販売機会を国内外で提供し、お手伝いさせていただくことができると考える

当社のコンセプトは「農林水産業者支援及び地方創生を具現化するため、日本食・食文化をブランディングし、各協力企業と連携し、ECやリアル店舗を通じて新たなマーケットを創出すること」である。そのためのファースト・ステップは、中小規模農林水産業者との連携による商品の発掘、ブランディングだ。セカンド・ステップは、EC (電子商取引) 、リアル店舗および輸出を通じたマーケティング・販売としている。

そして、サード・ステップは国内外への店舗拡大、越境ECによる販売拡大となる。最終的には、中小規模の農林水産業者に生産力および収入を拡大してもらい、地方活性化および地方創生を図ろうと考えている。

しかしながら、われわれは”プロフェッショナル”ではない。最大の役割は、各分野のプロフェッショナルの皆さまに集まっていただき、パッケージ化に向けたプラットフォームを提供することではないかと考えている。農林水産業者、地方自治体はもちろんのこと、現在、冷凍技術・衛生面・パッケージ、IT (情報技術)関連、観光需要やイメージブランディング、国内・国際物流と各方面のプロフェッショナルの皆さまにご賛同いただき、本格的な事業開始に向けた準備を進めている段階だ。

具体的にどのような事業を行っていくのか。まず一つ目はECを利用した頒布会の展開だ。単なる商品の陳列とは一線を画す。地方の農林水産業者が大量生産できない、こだわりの商品、そのストーリー、作り手の思い、そして、その地域の風景を融合し、販売していく新たなビジネスモデルを構築する。まずは、生産者と消費者をつないでいくことを目的に行う。

二つ目は、リアル店舗の展開だ。こだわりの商品をただ単に陳列しているだけでは、手に取ってもらえることはあるものの、なかなか売れないことが想定される。われわれはリアル店舗で、まずは楽しみながら食べてもらう。また、その場で食べたものを購入でき、さらにはECでリピート購入ができるようにビジネスモデルを構築したい。また、リアル店舗だからこそ、生産者同士をつなぐことができる。情報交換の場としても利用していただくことも可能になろう。

まずは、この二つのビジネスモデルを具現化する。地方の農林水産業者の商品をブランディングし、最終的には、海外でのEC販売(越境EC)および海外でのリアル店舗展開も視野に入れる予定だ。繰り返しとなるが、輸出を農林水産業者およびメーカーの販路の一つと捉え、国内の延長に海外があるということを前提に事業を進めていく方針だ。

株式会社 ITADAKIMASU FINE FOOD 代表取締役副社長 高橋啓輔
2017年8月23日 日刊CARGO寄稿