食輸出の「創り方」《8》食輸出で事業者はもうかるか

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最近、食輸出を行いたい。または、行なっている事業者とよく話をさせていただく機会がある。その動機や実際に行ったことで分かったことなど、さまざまな話を聞く。その中で一番答えにくい質問がある。それは「食輸出を始めて、本当にもうかるの?」「食輸出に取り組んでみたけど、全然もうからない、本当に食輸出でもうかっている事業者っているの?」という質問だ。

筆者は食輸出に携わってはいるものの、食品製造や卸売業を行っているわけではない。しかしながら、なんとか食の輸出拡大を進めるために、事業者の方々にやる気になっていただかなければならない立場にいる。

では実際はどうなのか。アドバイザーを務めさせていただいている「関西・食・輸出推進事業協同組合」には現在、80社程度の事業者が参画している。そのうち、組合から継続的に取引を獲得している事業者は10数社である。残りの事業者は、参画しているものの、物産展でのマーケティングおよび商談会に参加しても、取引までに至らない事業者がほとんどだ。もちろん、参画具合は各社で異なる。

取引に至っている事業者はおおむね生鮮商材を取り扱っている事業者だ。ヒアリングしてみると、「オーダーが遅く手間ばかりかかる」「日本のスーパーや百貨店に卸している方が物量も多い」と言ったマイナス意見も聞こえてくる。一方で、「今はもうからなくても、今後、日本の取扱量がどんどんシュリンクしていく中、現在は少なくても輸出を続けていけば、将来的にはプラスになるのではないか」という意見も聞くことができる。

「輸出がもうかるのか」という質問の答えは現時点でどうなるか。前記を踏まえれば、卸先および納入先の一つが増え、それが海外だったという比較的軽い考え方を持つ。また、将来的には物量が増えてもうかるかもしれないという期待感というものではないかと考える。

輸出でもうかっている(社内で輸出が事業化されており、輸出売上高が10億円程度)中小企業に話を聞くと、現時点でも、やり方によってはもうかるのではないかという意見が多く聞かれる。特徴としては、加工品の卸売業として、比較的安価な商品から比較的高価なプライベートブランド商品まで、何でも集めることができる点にある。言い換えれば、バイヤーのニーズに応えているということだ。国内および海外バイヤーの信頼も厚くなり、自然とそこに商売が成立する。また、紹介により商売が広がるという素晴らしいスパイラルが生まれる。「輸出がもうかるのか」との答えとしては、バイヤーのニーズに応えることができる仕組み作りができれば、現時点でももうかるという言い方もできるのだろう。

しかしながら、この状況まで単独で事業ができる中小企業は、ヒアリングした限りではほんの一握りだ。そうなるまでにはある程度時間も必要だろう。

株式会社 ITADAKIMASU FINE FOOD 代表取締役副社長 高橋啓輔
2017年8月9日 日刊CARGO寄稿