食輸出の「創り方」《6》食輸出とインバウンドの関係

記事

これまで、食輸出はどうしてこのように難しいのか、また、どうしたら伸びる可能性があるのかについて言及してきた。今回は、食輸出とインバウンドの関係について考えてみたい。

食輸出の上位10カ国は、1位香港、2位米国、3位台湾、4位中国、5位韓国、6位シンガポール、7位ベトナム, 8位タイ、9位オランダ、10位カナダ(2016年貿易統計を基にした近畿運輸局の作成資料から引用)となる。一方で、訪日外国人数については、1 位中国、2位韓国、3位台湾、4位香港、5位米国、6位タイ、7位シンガポール、8位マレーシア、9位インドネシア、10位フィリピン( 16年日本政府観光局資料から引用)だ。

食輸出については、各国規制、関税などの問題があり、全てに相関があるとは言えないが、多くの国・地域で相関関係があることがわかる。アジア諸国において日本への訪日外国人数が多いのは、ピザの緩和の影響も大いにあるが、アジア諸国においては日本への憧れという部分が非常に大きいのであろう。次に、訪日外国人客の日本へ来る目的を見てみると、かつては、歴史遺産などの観光が目的だったのに対し、近年では、日本食を食べることやショッピングが大きく伸びている。よって、インバウンドの状況を見ても、日本からの食輸出については、まだまだチャンスがあることがわかる。

それでは、このインパウンド需要をどのようにうまく食輸出につなげていけばいいのだろうか。観光庁が毎年発表している「訪日外国人消費動向調査」を読み解くということも、一つの重要な要素であろう。同調査には、各国別の最も満足した購入商品、最も満足した飲食などの統計が記載されている。例えば、最も満足した飲食として、香港からの訪日旅行客は、1位肉料理、2位ラーメン、3位魚料理(寿司を除く) 。一方、米国からの訪日旅行客では、1位寿司、2位ラーメン、3位肉料理と各国により趣向が異なる。これにより、香港においては、まだ、和牛が拡大する余地はあるのではないか。また、米国において、鮮魚輸出が拡大する余地があるのではないか。衛生管理手法の国際標準HACCPの取得を検討してみてはどうか、などの可能性を考えることができる。

次に、検討する必要があることは、年間2400万人を超える訪日外国人旅行客に対し、日本でマーケティングをできないか、ということである。これだけ多くの外国人が日本に来られているのであれば、この状況を生かさない手はない。例えば、空港、フェリーターミナル、市中の商業施設など、外国人が集まる場所で、マーケティングを行いたい商品を提供・販売する。そして、どこの国から来た何歳ぐらいの外国人が何を買っていったかということをデータ化する。それを、海外バイヤーとの商談会に生かせば良いのではないだろうか。

これまでの商談会を考えてみると、「当社の商品は本当においしいですよ」とプロダクトアウトの商談が散見された。しかしながら、前記データを生かせば「あなたの国の〇歳ぐらいの女性の方々が月にこれぐらい買っていかれたから絶対に売れますよ」という商談ができる。定量的であるし、バイヤーのリスクも軽減することだろう。後は値段、賞味期限などについてよく検討していけばいいのではないだろうか?

輸出に取り組む事業者は、インバウンド消費動向にアンテナを立て、食輸出の参考にするということを忘れてはならないだろう。

株式会社 ITADAKIMASU FINE FOOD 代表取締役副社長 高橋啓輔
2017年7月14日 日刊CARGO寄稿