食輸出の「創り方」《4》商流構築への支援機関の役割(上)

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第2回、第3回と商流構築のための物流の重要性について書いてきた。しかしながら、商流構築のためには、物流以外にも、販路開拓、ブランディング、販路開拓後の営業など、さまざまな要素がある。もちろん、食輸出に携わる事業者が積極的に仕掛けをしていく必要があるが、やはり1社の力ではコスト、費用、アイデアの部分から考えても厳しい状況である。そのような中、支援機関はどのようにサポートしていくべきなのだろうか。

商流構築のためにまず事業者が取り組むべきことはマーケティングである。国、自治体などがマーケティング情報をしっかりと提供することから販路開拓が始まると考えている。私がこれまで経験し、感じたことは、事業者が良い商品と考え、自信を持って売り込むものの、その国の価格帯に合わず、取引につながらない面がある。当たり前のことだが、どれだけおいしくて良い商品であっても、その国で売れ筋の価格帯と大きく乖離していると取引につながらない。マーケティング情報を提供するということでは、その国の売れ筋の価格帯を事業者に提供することが重要な要素となる。また、もし、事業者が輸出したい国の価格帯に合わなければ、他の国・地域を紹介するということも必要なのではないかと考える。

次に販路開拓機会の提供である。国、自治体などは、商談会や展示会の開催、また、物産展やアンテナショップなどを通じ、テストマーケティングのさまざまな機会を提供している。これらには関連した補助金により、比較的安価に出展できることも事業者にとっては非常に大きなメリットだ。しかしながら、出展した事業者のうち、販路開拓ができているのは一握りだ。特に展示会、商談会の出展に関しては、「販路開拓につながらないから意味がない」との声を多くの事業者から聞く。ただ、個人としては、展示会および商談会こそが一度に多くのパイヤーと知り合うきっかけができる機会と考えている。

では、なぜ多くの事業者からそのような声が聞かれるのだろうか。それは、一言で言うと、準備不足および出展への心構えにあると考える。出展するには、取引に必要な情報を英語で準備する必要がある。特に英語が苦手な事業者にとっては、海外のバイヤーが見て、ほとんどの商品情報を理解してもらう必要がある。それがしっかりと準備されているだろうか。会期中、ほとんどの場合、海外バイヤーは、何か良い商品があれという考え方で訪れる。大規模の展示会になれば何百、何千ものブースを回り、商談する。その中で、事業者と商談したことをパイヤーはしっかりと覚えてくれているだろうか。私は、会期中に商談したバイヤーとは、少しでもバイヤーの印象に残るように、記念撮影をしておくことを勧めている。最後に会期中、会期後にお礼メールや事後のアポイントができているだろうか。

一方、国、自治体など行政機関の役割は、販路開拓の機会を提供することだが、出展する事業者は基本的に何も知らないということを前提とする必要もある。事業者の商流構築に必要なマーケティング情報を提供し、現場に即した事前準備、また、会期中および会期後までを販路拡大機会の提供と捉え、最後まで責任を持って対応することが必要だ。

株式会社 ITADAKIMASU FINE FOOD 代表取締役副社長 高橋啓輔
2017年6月14日 日刊CARGO寄稿