食輸出の「創り方」《3》商流構築のためのインフラ
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食輸出のさらなる推進のためには、インフラ会社が非常に重要な役割を持つと私は考えている。関酉におけるインフラ会社の代表といえば、航空輸送においては関西エアポート、海上輸送においては阪神国際港湾会社である。双方のインフラ会社がどのような役割を持つのか、私の経験を含め考えてみたい。
まずは、ハード面の環境整備である。一概にハード面の環境整備と言っても、空港と港湾では少しニュアンスが異なるように思う。言い方が正しいかどうかは分からないが、空港におけるハード面の環境整備は、その空港の特徴を全面に押し出すために空港会社が仕掛けることができる。一方、港湾におけるハード面の環境整備は、既に存在する施設をうまく生かすということなのではないか、と考える。私が空港会社に従事している際には、他国際空港と差別化するため、関空は「貨物に優しい高品質空港」を目指していた。医薬品専用共同定温庫「KIX-MEDICA」(CKTSが運用)や食品輸出専用定温庫「KIX-COOlexp」(航空集配サービスが運用)はそれに代表される施設だろう。両施設の活用については、地元自治体の協力も得て、空港会社と各運営会社が共同で企画を行ってきた。それができるのは、航空貨物の特徴として、比較的単価が高く、ごくごく小ロットの貨物が多いからである。前記施設は、航空貨物の特性に応じた最低限の設備であり、オーバースペックしているような施設では決してない。
一方で、海上輸送においては、各港にすでに各事業者が広大な上屋、冷蔵・冷凍施設を整備している。海上輸送においては、これからお金をかけて新たな専用施設を整備するのではなく、すでにある施設・設備を商材の特徴に応じてうまく生かしていくことだと考える。
食品輸出のインフラ環境整備においては、食品の特性を勘案し、海上輸送、航空輸送に関わらず、常温・冷蔵・冷凍全ての商材が安全に輸送できる最低限の施設があれば十分ではないかと私は考える。また、ハード面の環境整備と並び、非常に重要なことはソフト面の環境整備である。ソフト面の環境整備とは、「商流、物流を融合した仕組み」を構築するということである。
インフラ会社は、ハード面の整備や管理を行うと同時に、「ニュートラルな」立場を利用して、ソフト面の環境整備を行う必要がある。インフラ会社は、物流事業者、荷主、国、自治体、協力企業など食輸出に携わる事業者と「ニュートラル」な立場でお付き合いできることは非常に大きな強みである。具体的には、荷主から商流を構築するにあたり、必要な事項についてヒアリングし、食輸出に携わる事業者にフィードバックする。加えて、率先して仕組みを構築することである。
仕組みを構築するにあたり、決して縦割りや点で考えるのではなく、横串を刺し、線で考えることだ。私が関空時代、理解ある上司のおかげで、関空「食」輸出推進委員会、関西「食」輸出戦略会議、関西・食・輸出推進事業協同組合、関西フードエクスポート&ブランディング協議会の設立、運営など直接、空港運営に直結しない仕事をさせて頂き、他地域には類の見ない体制を構築することができた。よって、インフラ会社は自分たちが最も「ニュートラル」な存在であることを忘れず、事業者の意見を吸い上げ、関係各所の取りまとめに従事するべきである。
最後に、自分が空港運営を離れた現在思っていることを書きたい。空港運営を離れてから、かねてから強く思っていた海上輸送におけるサービス構築について、大阪市港湾局、阪神国際港湾会社、大阪港埠頭会社と行っている。今年度中には、事業者と連携し、海上冷凍・冷蔵混載輸送サービスを構築できる計画だ。それにより、食に携わる事業者の輸送における選択肢は飛躍的に増加するものと期待している。
航空輸送においても品質を担保した混載輸送の確立は進んでおり、今後は航空輸送・海上輸送双方の連携が必要なのではないかと考えている。そもそも航空輸送と海上輸送の対象品目は異なる。航空・海上輸送におけるインフラ会社はライパルではないのだ。あくまでも食輸出に携わる事業者のために事業を行うべきであり、それが最終的には地域活性化につながるのではないだろうか。
次回は、少し物流から離れ、国、自治体および協力機関がどのように食輸出に携わるべきなのかを書いてみたい。
株式会社 ITADAKIMASU FINE FOOD 代表取締役副社長 高橋啓輔
2017年5月24日 日刊CARGO寄稿