食輸出の「創り方」《プロローグ》なぜ、食輸出に魅せられるのか?

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日本の農林水産物・食品輸出額は16年に前年比0.7%増の7503億円となり、ここ10年で87%増となった。政府の目標である19年1兆円もいよいよ現実味を帯びてきた。日本の消費市場は、高齢化、人口減少により、物理的に“胃袋”は小さくなる。輸出の増加は、東アジアおよび東南アジアの経済成長など、さまざまな理由で、大きく伸びていることは間違いない。

一方で、関西における輸出現状を数値としてみてみると、関西国際空港における食品の輸出額は444億円、阪神港は1730億円。5年前と比較すると、関空で倍増、阪神港で65%増と、大きく伸ばしている。ただし、各港の輸出額全体の構成比を考えると関西空港で0.2%、阪神港で1.9%にすぎない。また、中小企業および小規模事業者が、個社で輸出を行うということは、販路開拓、煩雑な輸出手続き、決済など、大きなハードルがあり、非常に難しいことは周知の事実である。

前述のような状況の中、なぜ、今、食輸出を行うのか。なぜ、食輸出に魅せられてしまうのか。私も食輸出の魅力に取りつかれた一人だ。昨年7月、関酉エアポートを退社し、食輸出および日本食・食文化をピーアールする拠点施設の設置運営を行う会社を設立した。

私見ではあるが、その答えは、食品輸出はまだまだ正解はなく、商流・物流両側面から見ても成熟していない市場だからではないだろうか。その成熟していない部分にこそ、企業がもうかる仕組みがあると考えるからではないだろうか。

商流を考えると、食輸出においては、規模が小さく、手間がかかる割にもうからない。そうした理由から、大手商社は介在せず、比較的規模が小さい商社やメーカーが直接輸出を行っていることが多い。特に中小企業・小規模事業者が直接輸出を行うとなると、国、日本貿易振興機構(ジェトロ)、都道府県が行う商談会や展示会に出展し、販路開拓を行うことになる。ただし、いざ取引が決まりそうになったとしても、そこからの物流手続き、輸出手続きができず、成約につながらないケースが非常に多い。

物流を考えると、私の経験上、物流事業者の営業は、出来上がった既存の商流から物流部分を切りとり、物流効率化による費用低減を行う営業がほとんどではないかと考える。

食輸出においては、商流を構築する中小企業・小規模事業者と物流事業者の間に大きなギャップがあるのではないだろうか。中小企業·・小規模事業者は、商流を構築するためには物流が必要であり、商談時も物流の検討を同時進行で行っていく必要があると感じている。一方で、物流事業者においては、商流は物を売りたい(買いたい)事業者が構築し、物流効率化を提案することが自分たちの役割だと考えているように感じる。

次回から、前述のギャップを埋め、食輸出をさらに伸ばしていくためには、どのように商流を構築していけばよいのか。そこに、どのように物流事業者、また、その他関係機関が関与していけば良いのか。答えがない課題について考えてみたい。

株式会社 ITADAKIMASU FINE FOOD 代表取締役副社長 高橋啓輔
2017年4月12日 日刊CARGO寄稿