食輸出の「創り方」《1》関西における食輸出の取り組み

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私が食輸出の取り組みを始めたのは今から6年前にさかのぼる。関西国際空港において、どのように貨物量を伸ばすかという議論の中、新しい貨物の流れを作る「創貨」事業の一環として、食輸出事業の取り組みを開始した。

まずは行政・経済界とともに、「ALL関西食輸出推進委員会」「ALL関西食輸出戦略会議」を設立。月並みであるが、伊勢丹バンコク店の協力を得て、物産展を開催し、アジアにおける日本食・文化の人気を肌で感じることができた。

しかしながら、このイベントで最も考えさせられたことは、今後、食輸出を継続させることを勘案すると、設立した組織の中に商流を構築できる事業者がいないということだった。そこで、われわれは、中小の食品関連企業とともに、海外で販売における競争力を持ち、継続して食輸出を行うため、2013年8月「関西・食・輸出推進事業協同組合」を設立した。発足時4社でスタートした当組合も17年3月末現在、80社の組合に成長し、食輸出拡大に努めている。また、14年4月、大手民間企業6社のコンソーシアムによる「関西フードエクスポート&プランディング協議会」を設立し、輸出に取り組む事業者への支援を行っている。

これにより、商流の確立は民間企業体である「関西・食・輸出推進事業協同組合」および「関西フードエクスポート&プランディング協議会」が行い、行政・経済界からなる組織である「ALL関西食輸出推進委員会」および「ALL関西食輸出戦略会議」が民間企業共同体の取り組みを支援するという、ALL関西食輸出体制が確立された。

では、同体制の中、どのように商流を構築していけば良いのか、輸出拡大に取り組んでいけば良いのだろうか。一言で商流構築とっても、商材に応じた輸出戦略を検討していく必要がある。

輸出商材については大きく分けて、生鮮商材と加工商材に分けられる。私見ではあるが、商材によっては、加工食材より生鮮食材の方が現地で受け入れられやすいのではないかと考える。生鮮食材については、現地バイヤーもその味・評判を良く知っている。エンドユザーに対しても説明が比較的容易であると考えるからである。関西・食・輸出推進事業協同組合が輸出している商材のほとんどが生鮮商材であるということを勘案しても明らかである。

では、どうして加工食材の輸出は難しいのか。加工食材については、こだわりを持って作られた商品でるため、そのこだわりを現地バイヤーに伝えることが難しい。中小企業においては日本で通用する企業ブランドが通用しない。また、その価格に対して、うまく価値を見いだしてくれないという部分も大きいと考える。

次に日本の加工商材は賞味期限が短いということがあげられる。特に通関リスクの高い国においては、いくら良い商品であっても賞味期限が短いと交渉の土俵に上ることさえできない。加工品の輸出については、味に加え、価格、長い賞味期限が必要である。

前記課題を解決するため、前年度、経済産業省の補助金を利用し、関西フードエクスポート&プランディング協議会の参画企業であるサラヤ(本社=大阪市)と連携し、鮮度を保ったまま凍結するラピッドフリーザーを利用。水産物の商品企画プランディングを行った。この技術を利用することにより、通関リスク、パイヤーの在庫リスクを劇的に減少させることに成功した。また、凸版印刷(本社=東京都台東区)の賞味期限延長フィルム(GLフィルム)を利用することにより、商品に新たな添加物などを入れることなく、90日の賞味期限の商材を最長1年まで延長することに成功。中国バイヤーのプライベートブランドとして販売する契約をとりつけた。

しかしながら、同体制でマーケットインできる商品のブランディングを行っても、大量発注が来るとは限らない。少量の物をいかに低コストで輸送するかということも食輸出を行う上で非常に重要な要素である。次回は、食輸出における物流事業者の役割についてフォーカスしたいと思う。

株式会社 ITADAKIMASU FINE FOOD 代表取締役副社長 高橋啓輔
2017年4月26日 日刊CARGO寄稿