食輸出の「創り方」《2》商流構築のための物流とは

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食輸出の「創り方」《2》商流構築のための物流とは

第1回でも述べたように食品輸出業界は、一部の大量輸出を行っている商材を除けば、商流・物流ともにまだまだ成熟しておらず、これからの業界であると私は考えている。

これまで、国、自治体、その他関係機関が中小の食品メーカーのために数え切れないぐらいの商談会や展示会の機会を提供してきているのは周知の事実である。また、参加事業者においても、パンフレットなどの事前準備、会期中の商談、事後フォローなどについて、よく勉強をされて参加されているということを肌で実感する。しかしながら、展示会、商談会に出ても結巣が残せないという事業者の声をいまだ多く聞くということが現状である。

その原因は何なのだろうか。せっかく展示会、商談会に出展し、現地バイヤーが商品に興味を持っていただいたとしても、最初からコンテナ単位での注文が入ることはまれだ。最初は、1ケース単位など、ごく少量のオーダーであることがほとんどである。商品価格に対する運賃負担が大きすぎることが原因で、取引に至らないわけだ。いざ取引が始まったとしても、煩雑な輸出手続きや決済など、実務面が分からない。また、そこに時間や人を掛けることができないなど、さまざまな理由で取引を始めることができないのではないかと私は考える。

一部のバイヤーにおいては、全国から小ロット商品をあらかじめ決定した空港・港に集め、一本化した上で輸出するなどの工夫を行っている。ただ、事業者にとっては、近隣の空港・港から輸出するよりも、国内運賃がかかっているなど、根本的な解決にはなっていない。

そのような状況の中、物流事業者は食輸出にどのように関わっていくべきなのか。一言で言うと、足元の物流だけを見るのではなく、食輸出を行う事業者に寄り添い、将来を見据えた関わり方をしていくべきではないかと考える。

まず物流事業者が理解すべきことの第一歩としては、食輸出に取り組む事業者をよく知るということだ。特に、初めて輸出に取り組む事業者に対しては、物流について「ほとんど知らない・分からない・意識をしていない」ということを念頭に置き、お付き合いをするべきだと考える。よって、物流事業者は、食品輸出にかかる事務手続き、国内・現地の物流について、全て引き受ける必要があると考える。そうすることにより、食輸出に取り組む事業者は安心して、精いっぱい、自社商品の素晴らしさを海外バイヤーに伝え、マーケットインさせる商品に対するプランディングに専念することができるのではないかと考える。

そしてもう一つは、食輸出に必要な新たなサービスを構築することではないかと考える。新たなサービスと言っても、航空輸送で利用されている「活魚コンテナ」や海上輸送で利用されている「CAコンテナ」のようなハード面のサービスではなく、ソフト面でのサービスである。確かにハード面のサービス構築は非常に重要な要素であり、日本の最新技術を利用し、さらに推し進めていくべきである。しかしながら、ソフト面のサービス構築がハード面に比べて遅れているのではないかと考える。

例えば、海上輸送における冷蔵・冷凍の混載輸送がある。海上輸送における冷蔵・冷凍の混載輸送は現在のところ、日本の一部の港から一部の地域へのサービスしか提供されていない。常温貨物に比較し、冷蔵・冷凍貨物については、需要が不透明である、海上運賃が高く、リスクが高いという理由からであると推測される。しかしながら、前述のとおり、食輸出においては、取引当初よりコンテナ単位での注文が入ることはまれであり、ごく少量で開始されることがほとんどである。海上輸送において冷蔵・冷凍の混載輸送サービスが確立されていないことから、食輸出に取り組む事業者は本来、海上輸送される商品を物量が大きくなるまでは、やむを得ず、航空輸送を利用しているケースが散見される。

現在、食輸出に取り組む事業者が安心して商流を構築できるように、阪神国際港湾会社、大阪港埠頭会社、大阪市港湾局とともに、大阪港において、海上輸送における冷蔵・冷凍混載輸送サービスの構築に向けて取り組みを開始しており、今年度中には、シンガポール、マレーシア、台湾、香港、タイ、中国に向けた混載サービスの提供を行いたいと考えている。

このように、このまだまだ成熟していない食輸出を支える物流事業者の役割として、輸出における事務手続き、国内・海外での輸送を一手に引き受け、多様なサービスの構築が重要なのではないかと考えている。

次回は、航空輸送、海上輸送を支えるインフラ会社の役割について、私の経験も踏まえ考えてみたいと思う。

株式会社 ITADAKIMASU FINE FOOD 代表取締役副社長 高橋啓輔
2017年5月10日 日刊CARGO寄稿